株式会社メディオクリタス

Mediocritas, Inc.

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事例・実績

開発工数を半減し、浮いた人員を新価値創造領域へリソースシフト

設計プロセス改革

自動車部品業界

技術開発&設計

改革目標
・新価値創造領域への人的リソースシフト
・新価値実現のための次世代開発プロセス構築
プロジェクト背景
自動車業界の大変革・CASEに直面し、新価値創造が課題であった大手自動車メーカーのL社。新価値創造領域へ人的リソースをシフトするべく、開発工数半減が目標として掲げられた。
 業界トップクラスの開発効率を目指し、エレ・メカ・ソフトの各設計部門が施策を検討。上流設計をシステマティックに行う仕組みや、下流設計の効率化・自動化など、部門横断領域含め、多岐に渡る施策が候補に挙がった。そして、複数のITベンダーも巻き込み、投資金額数十億円の大規模プロジェクト立ち上げが決まった。
プロジェクト概要
まず最初に行ったのは、開発工数半減を実現する理想の開発についての徹底的な議論。役員クラスを巻き込み、ワークショップ形式で何度もディスカッションを重ねた。ディスカッションの末に、理想の開発環境をあるべき姿として策定。ワークショップで出た実現性無視のアイデアも参考に、各設計部門で構成された施策検討ワーキンググループが、実効性のある具体施策に落とし込んでいった。
例えばエレキ設計では、シミュレーションの大規模化やブロック設計のツール化、基板設計の一部自動化など。メカ設計では、頻発していた品質不良項目の論理的設計手法の開発とシミュレーション化などを施策とした。ソフト設計では、不具合分析のAI化や評価の自動化などを施策に盛り込んだ。20近い施策を取り纏め、プロジェクト企画書を作成。役員会で数十億円規模の予算承認を取り付けた。
活動承認後、ワーキンググループ数は3⇒7に倍増。プロジェクトメンバーも大幅増強して、プロジェクトの実行計画を策定。構想企画、プランニングを経て、プロジェクトは実行フェーズに突入。現行業務の効率化ではなく、設計のやり方そのものの変革から入ったため、一部のITベンダーには常駐頂きながら要件を詰め、理想の設計環境を形にしていった。市販のツールをそのまま活用できる領域もあったが、しっかりトライアルした上で本格導入していった。施策実行が進むにつれ、一部の施策で実現性や実効性が乏しいことが判明。しかし、迅速に代替施策を検討し、掲げた効果目標を諦めることなく活動を推進していった。
企画構想含め3年という長い期間の中、プロジェクト後半ではプロジェクトメンバーのモチベーションが徐々に低下し、現実路線に流されているように見受けられることが多くなった。メンバーの入れ替わりがあったり、進捗が芳しくない施策も出てきていたことも一因だった。そこで、ステアリングコミッティとして参画頂いた技術トップが、活動の意義を再確認するディスカッションを開催し、プロジェクトメンバーと直接想いをぶつけあった。さらに、社内向け広報誌を発行したり、社内展示会を開くなど、本活動の重要性を広く知ってもらえたことで、プロジェクトメンバーのモチベーションに繋げた。
プロジェクト発足時の構想通り、プロジェクトは3年で終了。難易度の高い一部施策を除き、ほぼ全ての施策が新規開発モデルから順次導入された。各施策は開発効率化に着実に貢献しており、100人規模のリソースシフトが進んでいる。
変革ポイント
・設計下流での手戻り削減のための回路ブロック設計プロセスの構築と専用CADの開発
・品質向上恒久策としてのメカ論理設計手法の開発とシミュレーション化
・大規模プロジェクトでもタイムリーに評価可能なソフト設計のビルド~評価自動化
効果
・引合い対応や新価値創造領域に設計者を100人規模でリソースシフト、品証や生産など他部門にも数十人規模でリソースシフト
・プロジェクト完了後1年で、投資総額の70%以上の効果金額を創出、2年目には投資回収できる見込み
ご支援内容
① 現状調査・分析、勉強会・他社との技術交流会開催、Visioningワークショップ開催
② あるべき姿策定
③ 改革施策策定・取り纏め
④ ROI取り纏め、大日程策定、体制図策定、マイルストーン定義、KPI設定、会議体設定
⑤ 設計手法の技術支援、設計ツール作成支援
⑥ 進捗・課題管理、月次での役員向け報告会資料作成、プロジェクト企画書作成、プロジェクト定義書作成、各施策のマイルストーン審議会開催、社内報の発行、社内展示会の企画・運営、効果刈り取り
期間
3年
担当ダイレクタから一言
プロジェクト発足当初のL社の開発環境は、他社と比べてそこまで非効率な訳ではなく、むしろ一通りのツールは揃っていた。ただ十年間投資して来なかったことで、古い設計環境が効率化への足かせとなっていた。そういった意味では、L社は“もっとこんな風に開発したい”という想いを抱えていたからこそ、大規模プロジェクトの企画が承認されたのだろう。
「開発工数半減」という非常に高いハードルをお題目に掲げても、怯むことなく理想を追い続けたプロジェクトメンバー、プロジェクトメンバーを常に引っ張ったコミュニケーション能力と改革マインドの高いプロジェクトリーダー、そしてプロジェクト活動を全面的にバックアップし、プロジェクトメンバーを鼓舞し続けた技術部門上層部がスクラムを組み、技術部門が一体となって推進したことが、プロジェクト成功の要因と断言できる。
ハード設計者(エレキ/メカ)とソフト設計者との間に存在する、文化が違うのではないかと思うほどの考えの相違や、トップマネジメントと現場との間に厳然と存在する視点の相違を抱えながら、時に清濁併せ吞むかのようにプロジェクトを進めたが、コロナ不景気に間に合ったのは幸いである。
プロジェクトのその後
他事業の設計部門や海外法人に対して、本プロジェクトの横展開中。(継続期間:4年)