株式会社メディオクリタス

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知見・論考

未来につなげるテクノロジーの活用法

研修
弊社勉強会では、社員が興味を持った知見の紹介も行っています。本記事では、コンサルタント小西からの「Body Sharing」[1]についての紹介を受け、「Body Sharing」のような新しいテクノロジーを活用するための発想法について社内で議論したので、紹介します。
Body Sharingとは
Body Sharingとは、人と人(あるいはロボット)が身体感覚を共有することです。たとえば、ある人がモノを掴んだ時に手が感じる圧力などを別の人に共有することです。
近年、「ポゼストハンド」(図1) [1]と名付けられたBody Sharingのための画期的な装置(インターフェース)が開発され、注目されています。ポゼストハンドは、筋肉に電気刺激を与えるリストバンド型インターフェースで、別の人の手の触覚を受動的に知覚できるだけでなく、自分の手の動きを別の人に模倣させることを可能にします。たとえば、ポゼストハンドを身に着ければ、プロの演奏家が楽器演奏している身体感覚を受け取り、演奏を模倣することもできるそうです。この他にも、教育、医療、レジャーなど様々な分野への様々な活用案が検討されているようです。
「3F」起点のアイデアは冴えない
勉強会ではBody Sharingが我々コンサルの業務を含め、どう活用できるかアイデアを出し合いました。しかし、既に参考文献で紹介されている活用法と類似し、大して面白いとは言えないアイデアが目立ちました。

面白くないアイデアには共通点がありました。それは、現在抱えている不安・不満・不便(いわゆる3F)を起点にしたアイデアということです。たとえば、「ポゼストハンドを使って、新人にベテランの作業を模倣させ、作業スキルの底上げを図ろう」といったアイデア(以下、「アイデアA」と仮称)です。つまり、従業員の作業スキルが低いという不満を起点にしたアイデアです。

3Fを起点にした発想が面白くないと感じられる理由は、主に3つあります。第一に、3Fの解消は顕在化しているニーズであり、誰もがすぐ思い付くということです。3Fは人々が普段苦しんでいることです。新しいテクノロジーの活用先を探そうとすると、誰もが自ずと3Fにとらわれた発想に陥り、似たり寄ったりのアイデアになるのです。先述の「アイデアA」も、誰でもすぐ思い付きそうなアイデアと言えるでしょう。既にあるニーズに応えるという意味では重要ではありますが、陳腐なアイデアでは競合と差別化できず面白くありません。

第二に、3Fを解消して得られるものは平穏であり、わくわくではないということです。もし、わくわくするような理想の未来像があれば、それは絶対的なプラスの状態と言えます。一方、3Fの状態はマイナスであり、3Fを解消した状態はゼロにすぎません。しかも、人は得てして常に新たな3Fを見出し抱え続ける生き物なので、3Fの解消は言わばひと時の平穏にすぎないさえ言えます。このように、3Fの解消イコール理想の未来ではないので、わくわくしないのです。実際、「アイデアA」でわくわくする人はいないでしょう。

第三に、3Fを解消した現在の延長線上に未来があるとは限らないということです。「アイデアA」を例にとると、そうした3F解消に励んでいるうちに、他社は該当の作業を自動化してしまうかもしれません。そうなっては時代遅れになります。このように、3Fの発想には、未来がどうなるか、未来をどうしたいかという視点が欠けているため、今一面白くないのです。
理想への制約をテクノロジーで克服する
新しいテクノロジーのビジネスへの活用を考える際、どう発想するべきか。それは、「理想の未来」を起点に発想することです。理想の未来は、何等かの大きな制約により、現状の3Fの解消よりも実現が難しい世界です。そこで、新しいテクノロジーが理想の未来への飛躍を阻む制約の克服に使えないかと考えるのです。

たとえば、理想の世界が「空を自由に飛べる世界」だとします。現状は空を飛ぶためのウェアラブルマシンなど様々なテクノロジーが開発されつつあります。しかし、危険性や訓練の必要性など様々な制約あり、空を自由に飛べる世界になっているとは言えません。そこで、たとえば、ポゼストハンドでスカイダイバーや鳥が感じる筋肉や風の感覚を共有することを考えます。視覚にはドローンの映像やVRを活用し、身体感覚上は空を自由に飛んでいるような錯覚を得られるとしましょう。すると、実際に空を飛べる訳ではないものの、危険性や訓練の必要性を気にすることなく、空を飛びたいという欲求を満たすことができ、理想の世界に近付けるのではないか、と考えを巡らせることができます。

また、理想の未来が「寿命を健康なまま全うし、死ぬまで〇〇(各自のやりたい事)をし続けて楽しむ」だとします。現実には、高齢になるとガンや心疾患が体を蝕み、気づいた時には既に手遅れ、その後は寝たきりの生活になるケースはしばしば見られます。そこで、不老不死や不病は現実的でないとしても、大病を未然に防ぐことができれば、理想に近付きます。その際の制約は、健康診断が年単位だったということです。しかし、健康状態を常時モニタリングできるスマートウォッチが普及したことで、状況は変わりつつあります。スマートウォッチは心拍数や心電図などを常時モニタリングでき、心臓の異常をリアルタイムで検出できるため、重症化の予防に役立つのです。今後、テクノロジーがさらに進展すれば、カバーできる病気の種類も広がるかもしれません。
以上から、新しいテクノロジーを見聞した際に、面白いと言える活用法を発想するためのポイントとして、以下の2点がまとめられます:

① 現状の3Fの解消にテクノロジーを活用するというは、顕在化しているニーズに応えるという意味では重要だが、誰もが思い付きやすく、実現しても必ずしもわくわくする理想には繋がらず、また時代遅れになりかねないため、面白いアイデアに繋がりにくい
② 理想の未来への飛躍を阻んでいる制約を特定し、その制約の克服のためにテクノロジーを適用するという、「理想の未来」起点の発想が面白いアイデアに繋がる
参照文献
[1] 玉城絵美、2019年『ビジネスに効く! 教養として身につけたいテクノロジー』総合法令出版。