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知見・論考

テクノロジーの進化がもたらす品質保証体系の変容

NQ
AIやセンシングデバイスに代表される近年のテクノロジーの進化は、日本の製造業が得意としてきた品質管理に、大きなパラダイムシフトを要請しています。これまでの品質管理は、人間の時間的・能力上の制約から、サンプルチェック(抜き取り検査)型のアプローチを標準的な方法論として、発生した不具合への原因究明と対策検討を主流としてきました。しかし、AIやセンシングデバイスは全点検査や網羅的シミュレーションといった全点モニタリング型アプローチを可能にし、従来のサンプルチェック型のアプローチを過去のものにするポテンシャルを持っています。スマート化が進む製品・サービスでは、ハードとソフトが融合し、設計・製造・検査内容も高度化・複雑化することで、サンプルチェック型のアプローチでは不具合の抜け漏れ抑制はどんどん難しくなるでしょう。テクノロジーの進化が後押しするこの品質管理の新たな潮流は、品質管理=検査という考えに基づく品質管理の在り方を抜本的に刷新することを意味しており、製造業のコアであるものづくりプロセスの在り方を一変する可能性を秘めています。
他分野におけるケース
他分野では、テクノロジーの進化が後押するパラダイムシフトが既に進行しています。たとえば、Apple Watch®に代表されるスマートウォッチによる体調モニタリング。スマートウォッチにアプリを搭載して身に着けることで、心拍数やECG(心電図)などを大した負担もなく常時モニタリングでき、体調変化をリアルタイムで捉えられます。血圧計搭載の高血圧患者向け腕時計は従来からありましたが、スマートウォッチの登場は体調モニタリングを飛躍的に身近なものにしました。最近では、ECGモニタリングのおかげで、80歳台女性の心筋虚血を発見できたという医学論文も出され [1]、SNS上で一時話題になっていたほどです。従来なら、こうした体調モニタリングは時間的にも能力的にも現実的ではなかったため、検査と言えば健康診断か通院時にのみ行うものでした。しかし、スマートウォッチにより日々の手軽な体調モニタリングに置き換えられ、重症化の予防に役立っている訳です。これは、スマートウォッチがもたらした健康管理のパラダイムシフトと言えるでしょう。
AIカメラや電子タグを使ったスマートストアでの売り場管理も好例です。Amazon GO®に代表されるスマートストアでは、買い物客が手に取った商品をAIカメラや商品の電子タグで自動識別し、決済は退店時に自動で行われます。これまで店員がレジで行っていた商品管理や決済処理は不要になり、属人的なミスもなくなります。さらには、店舗内での買い物客の購買行動をAIで分析し、最適な売り場を再定義する検討もされているとのことです。これまでは、人間の時間的・能力的な理由で諦めていたアイデアばかりです。小さな店舗の売り場管理レベルでは大した革命ではないと考えるなら、たとえば同様の発想を国内全体に拡げたと言える中国政府の国民監視と信用スコアリングを思い浮かべてみましょう。AIカメラなどのテクノロジーが管理分野にもたらすインパクトを類推しやすいでしょう。
上記の例は弊社が考える次世代の品質保証の好いアナロジーになっています。つまり、AIやセンシングデバイスを活用すれば、健康や売り場をモニタリングするように、品質も全点モニタリングできるようになります。それにより、スマートウォッチが健康診断、スマートストアがレジというゲートをなくしたように、次世代の品質保証は、DRや検査というゲートをなくすことが可能になります。すでにその動きは部分的に表れており、生産領域では、画像やセンサーによる全点品質検査、生産設備IoTによる生産条件モニタリング、生産後の商品の使用状況モニタリングといった実例が次々に出てきています。これらの考え方をバリューチェーン全体に適用することが、品質のレベルをシフトすることになります。
次世代型品質保証体系(NQ)とは
弊社は、最新テクノロジーを取り入れた次世代型品質保証体系(’NQ’と略称)の在り方を提案します。NQでは、AIやセンシングデバイスといったテクノロジーを活用することで、人間の時間的・能力的な制約に縛られた品質保証からを解放し、品質の全点モニタリングを可能にします。例えば、設計領域では可能性のあるパラメータを振ってシミュレーションを行うことで最適解を導き出し、品質を高めます。製造領域では、生産条件をモニタリングすることで従来の品質検査を無くしつつ、品質を保証します。これらにより、品質チェックから品質モニタリングというパラダイムシフトとなり、ゼロ不具合へ貢献します。また、この品質モニタリングは、従来のDRや検査という品質ゲートというものを撤廃することが可能となり、品質保証体系の在り方が変わります。また、CAEをはじめとしたデジタルツールを活用し開発プロセスの並列処理を増やすことで開発L/Tの大幅な短縮も可能になります。このホームページでは、今後もNQについてシリーズ化し、その考え方を連載します。
参照文献
〔1〕https://japanese.engadget.com/jp-2020-05-03-apple-watch-ecg.html